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Study Abroad Report
-留学記-
Ohio University
渡航者:有馬知志(D3、2024年3月時点)
留学先:Ohio University: Neuromuscular Biomechanics & Health Assessment Lab(アメリカ合衆国オハイオ州アセンズ)
留学期間::2024年2月~3月
・留学の経緯
2022年8月にデンマークで開催されたFourth World Congress of Sports Physical Therapyに参加した際に、今回の受け入れ先の教授であるDr. Dustin Groomsが講演者として学会に参加されていた。その講演を当時参加した研究室のメンバーで拝聴し、講演後に皆で挨拶に行ったことがことの始まりであった。その約1年後の2023年9月には、研究室から6名が実際にDr.Groomsの所属するOhio大学Neuromuscular Biomechanics & Health Assessment Labを訪れ、交流を図ったところから海外研修へ向けた話は大きく動きだした。その後、約半年間に渡るDr.Groomsとのやり取りを教員のサポートをいただきながら行い、初めてお会いしてから約1年半の月日を経て、今回の海外研修の機会をいただく運びとなった。
Fourth World Congress of Sports Physical Therapyでの様子
Ohio大学訪問での集合写真
・留学先の生活とその様子
Ohio大学は、オハイオ州の中のアセンズという町に位置する。町は広大なOhio大学の土地を中心に、多くの学生が滞在し、地域の方々も多く大学の施設を利用している様子であった。それもあってか、町は比較的治安が良く、夜に出歩いても危険なことはめったに起こらないという話であった。留学や研修を行うには非常に良い町と大学であると感じた。アセンズの気候に関して、滞在期間のうち2月は日中で華氏50F°(摂氏10℃)前半、夜は華氏23F°(摂氏-5℃)前後と肌寒く雪が積もる日もあった。3月に入ると気温は上昇し、華氏68F°(摂氏20℃)半ば、夜は華氏50F°(摂氏10℃)ほどと暖かい日が多くあった。しかし気候以上に、全世界でアメリカだけが使用する気温の表記「華氏(F°)」には戸惑い、結局滞在期間で慣れることはなかった。その他、距離の単位である「マイル」や身長・靴の単位である「フィートやインチ」、重さの単位である「ポンド」など日本人にとってはなじみのない単位ばかりが日常にあふれかえっていた。そして、3月2週目の日曜日、午前2時からサマータイムが始まり、時間がいきなり1時間進んだ時には驚いたが、こんなことも実際に現地に滞在しないと体験できない日常であると感じた。
天気が良い日のアセンズ
雪の日のアパートの様子
今回の滞在先は、大学から1.2マイル(徒歩25分、自転車で10分ほど)の場所にあるマンスリーのアパートであった。このアパートを借りるのにも少し苦労した。アメリカでは、賃貸を借りる際、最初の賃料と敷金を「小切手(Check)」か「マネーオーダー(Money order)」で支払うのが一般的ということを知らず、はじめ管理者から現金やカードは使えないといわれた時には非常に焦ったことを覚えている。小切手は、アメリカでの銀行口座がないと用意できないということで、私は郵便局かスーパーで手に入れられるマネーオーダーを受け入れ先の方の協力を得て準備した。初めの支払いに必要であった家賃1300$と敷金1250$を現金で日本から持っていくのも少し不安であった。アメリカでは銀行振り込みという概念が乏しいようだ。また私のような海外からの滞在者のようにやや信用度が低い者との取引や、貸出人が確実に費用を受け取りたい場合、クレジットや現金ではなく小切手やマネーオーダーでの支払いを求められるようである。そんなこんなありながらも、部屋の間取りは3LDKと広く非常に快適に過ごすことができた。アパートは大学からも比較的近く、大きなショッピングエリアも自転車で10分ほどで行ける立地であり、日常生活はありがたいことに困ることはなかった。このアパートを見つけ紹介して下さった前田准教授に感謝申し上げます。
アパートの一室
マネーオーダー
・留学先での研究活動内容
受け入れ先のNeuromuscular Biomechanics & Health Assessment Labは、Functional MRI(以下、fMRI)を用いた膝前十字靭帯損傷受傷後の脳の神経可塑性や、Virtual Reality等を用いた脳の神経可塑性への治療に関して主に研究を行っている。その中でも、fMRIの測定、解析方法を学び、足関節捻挫を中心とした足関節傷害の研究に応用する第一歩として本研修を行った。
はじめての海外での研究研修、そして研究活動としてこれまで行ったことのない分野を学ぶことができることに心躍った。しかし、ふたを開けてみると脳神経学やMRIについてなど国家試験以来本腰を入れて勉強することもなかったため、本研修前に基礎だけでもと思い日本で勉強したもののそれでは事足りなかった。また、fMRIの解析を行うために専用のソフトを使いこなすことはもちろんのこと、MacのCharacter User InterfaceであるTerminalを用いたコード入力を習得する必要があり、これに慣れるのに非常に苦労した。一度慣れてしまえば、そんなに難しくないことでも、やはりはじめての取り組みは苦労するものだと研修開始早々洗礼を受けたことは非常に思い出深い。その中でも、受け入れ先の研究室メンバーは、自分の仕事もある中、根気強く指導して下さり、測定の手配や予備測定などにもたくさん協力していただいた。やはり研究は1人だけでできることは限られており、日頃から研究室でも指導していただいているように仲間を作り研究を行っていくその大切さ、周りに一緒に研究してくれる仲間がいることのありがたさを改めて感じることができた期間でもあった。
今回の研修での具体的な成果としては、1か月と長いわけではない期間の中で、fMRIの測定と解析方法を一通り学ぶことができたこと、ある程度の研究デザインと方向性を決定し、その予備実験を3名分行いデータを習得できたことである。まだまだ、本実験を行っていくうえで検討すべきことは多くあるが、fMRIと足関節傷害の研究を走りださせるために最低限やるべきことは、達成できたように感じる。改めまして滞在期間中、英語も拙い報告者を見捨てることなく根気強く指導して下さった、Dr.Groomsはじめ研究室メンバーに心より感謝申し上げます。しっかりとこのプロジェクトを形にすることが私の使命である。
fMRI測定の様子
fMRI解析の様子
・海外で経験した日本との違い
今回が報告者にとってはじめての海外での研究研修であったが、生活文化と研究の2つの側面で日本との違いをいろいろと知ることができた。これに関しては、これまで研究室で留学を経験された方々からも海外に行って知るべきだといわれ、ずっと興味を持っていたことだった。
まず生活文化に関して、印象深かったことは仕事のオンとオフの区別が日本よりもはっきりしていると感じた。仕事と休日のオンとオフももちろんだが、仕事中でのオンとオフの切り替えも印象的であった。基本的には朝8時ごろに研究室を訪れ、17時には家に帰る。もしまだやらなければいけない仕事があった場合は、夕食だけでも一旦家に帰り、また研究室に戻ってくる。ずっと研究室にいてもクリエイティブなことはできないと区切りをつける。一日に3回はスウェーデン発祥の文化であり作業や仕事を中断して、コーヒーを飲む「Fika」に連れて行ってもらったことは1つの思い出である。日本人的感覚からするとなんだかさぼっているようにも聞こえるが、実際にやってみると不思議とオンとオフをしっかりと区別し、短時間でも仕事に没頭できた。日本に帰ってそれ通りにとはいかないかもしれないが、仕事を効率的に行う1つの方法として取り入れたいと思う。もう1つ興味深かったことは、分からないことはすぐに質問していたことだ。それも異常なまでに。日本で大学院生をしていると作業中に他の人にたくさん質問したり話しかけることは、作業の邪魔をしてしまう等の理由で気が引けてしないように思う。しかし、アメリカではすぐに質問しそれに関してみんなで考えたり、回答をしあうのが普通なようだった。分からないことはすぐに聞いた方が効率が良いし、質問された方も勉強になるから一石二鳥だという考えのようだ。時には集中を妨げられるのでデメリットもあるが、どんどんアウトプットしていくそんな方法も良いように感じた。
みんなでFikaにいって休憩
芝生で寝そべって論文を読んでリフレッシュ
研究の側面では、現地の研究者や大学院生から話を聞く中でもっとも違いを感じたことは研究室運営のシステムである。日本では、大学院に進もうと思えば学費を払ってどこかの研究室に所属させてもらい学位を取得するのが一般的なのではないかと認識している。しかし、アメリカでは研究室の教授が大学院生やPh.D.取得者を研究アシスタントやポスドク研究員として雇い取得した研究費から給料を払う、または大学雇用として大学から給与を支払うというシステムも多いようだ。そのような形で大学に所属した大学院生は、学費は免除で大学の福利厚生の一貫で単位を取得したり、論文を書いて学位を取る。そのような背景もあってか自腹を切って学費を全額払ってまで大学院に進学したいと思う人は少ないという話もあった。はじめはそんな夢のような話があるのかと驚いたが、よくよく考えてみると教授の立場からすれば研究費の獲得が研究室運営の命綱になる。アメリカの研究費も様ざまなようだが、採択率が5%以下のものもあるとのことで一筋縄ではいかないようだ。こういった運営面や研究費関連の話は、国ごとの事情や背景によって大きく異なるようなので、どれが良い悪いはないように思うが、違いを知っておき、それを自分がどう考え行動するかが重要なように感じた。
・今後の展望
今回習得したfMRIの測定や解析方法を日本でも実施できる環境を整えるため、オンライン会議等を通してDr. Groomsとその研究室メンバーとの継続した交流を図る予定である。また、fMRI測定や解析の継続した技術習得が、現地で必要なため2024年度中に再度滞在を予定している。
・謝辞
本研修の機会を与えてくださった浦辺教授、前田准教授、小宮助教、田城助教、そして大学院生の皆様に深く感謝申し上げます。研究室では、浦辺教授、前田准教授を中心に国際学会への参加やそこでの海外研究者とのつながりを作る重要性を常日頃からご指導いただいている。その重要性と苦労を今回の研修の機会をいただけたことで、身に染みて体験させていただくことができた。この研修で得た経験や糧を、スポーツリハビリテーション学研究室の国内・国際研究活動の発展につなげられるよう精進する所存である。
・連絡先
本内容に関して、質問や興味のある方は有馬までご連絡ください。
E-mail:satoshi-arima4646@hiroshima-u.ac.jp
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