宮下 浩二(みやした こうじ)
2005年~2008年度 教員(講師)として在籍
スポーツリハビリテーション学研究室で講師として教育、研究、スポーツ現場での活動に携わったのは2005~2008年度のわずか3年間でした。しかし、非常に密度の濃い3年間であり、それまでスポーツ選手専門の医療機関で臨床活動を中心にしていた私にとっては、浦辺教授をはじめ大学院生やゼミ生との研究室の活動は毎日が新鮮でした。
特に、毎年チャレンジした海外での学会発表では得がたい経験を多くしました。それをもとに英語論文を作成することにも取り組み、American Journal Sports Medicineに論文が掲載されたことで目に見えない大きな収穫がありました。
これら多くのことを得ることができたのも環境要因が大きかったことは間違いありません。研究室全体が世界に向けた発信を目指し、多くの新しいことにチャレンジしていく雰囲気がありました。
今は愛知県の中部大学で勤務し、多くのことに取り組んでいますが、この3年間が礎になったことは間違いありません。
私の研究室の活動を充実させるとともに、スポーツリハビリテーション学研究室がますます発展することを祈っています。
(2019年8月記)
笹代 純平(ささだい じゅんぺい)
2015年博士号(保健学)取得
広島大学教員期間2年
現所属:国立スポーツ科学センター
私は2010年からの5年間を大学院生として学び、2018年からの2年間を助教としてスポーツリハビリテーション学研究室で勤務しておりました。大学院入学当時を振り返ると、青森県立大学を卒業し、これから始まる新生活に期待と不安入り混じるなか、浦辺先生が広島湾に浮かぶ安芸小富士と呼ばれる似島(にのしま)にウォーキングに連れ出してくださり、研究や生活のことなど相談にいただいたことが今でもすぐに思い出されます。浦辺先生・前田先生とはそれからもザルツブルグの岩塩の洞窟はじめ国内外様ざまな土地を歩かせていただきました。
成長のための課題・チャンスは「やる気」のある人にしか訪れませんし、頑張る姿は誰かが見ていて、いずれ協力者も現れます。研究室ではなんでもチャレンジだと思い、研究・論文投稿だけでなくトレーナー活動、国際学会発表などに取り組んできました。なかでも、大学院生の頃の東日本大震災後の南相馬市立総合病院でのボランティア活動や、教員になってからの日本予防理学療法学会学術大会の準備・運営委員長は私にとってたくさんの気づきを与えてくれた得難い経験です。
パラスポーツもそんななか出会った生涯をかけて取り組むべき活動の一つです。2020年から、我が国のスポーツ医学を牽引してゆくべき組織である国立スポーツ科学センターでトップパラアスリートの医科学に資する業務に携わっております。特に理学療法士の視点での研究業績を増やすことが私の仕事です。個の力はもちろん重要ですが、一人でできること、使えるリソースは限られています。人と人とのつながりの力、スポーツのもつ力を昨今の社会情勢のなかでより強く感じております。今後は、研究室とOB・OGの各所属機関がそれぞれの強みを生かし協同研究の流れをつくることが、当研究室で大学院生・教員どちらの立場も経験した自分の使命と心得ております。
(2021年4月記)
2021年度はコロナ禍における自国開催の夏季パラリンピックに加え、そのすぐ半年後には北京での冬季パラリンピックという、これまでに前例のない状況のなか、現地にて選手のサポートに関わり、多くの感動を共有する機会をいただきました。
今回のようなパラリンピックという大舞台に限らず、日常的にパラアスリートのリハビリテーションを担当するなかで、トップレベルのパラアスリートの国際競技力向上のみならず、広くパラスポーツを支えるうえでは、スポーツ外傷・障害や競技に関する理解だけでなく、もともとの障がいやADL、障がい者を取り巻く社会制度・情勢など、幅広く見識のある理学療法士の役割はやはり大きいと感じております。障がい者(児)のスポーツへの参画は人々の健康増進のためにも重要と考えられており国が進める施策の一つでもあります。東京・北京での盛り上がりを一過性のブームとして終わらせないためにも、パラスポーツの裾野を広げていく必要があり、そのうえで必要なことはやはり競技者の安全性の担保であり、パラスポーツにおけるスポーツ外傷・障害の予防に関する研究は今後ますます重要であると考えております。
そういったところで、広島大学スポーツリハビリテーション学研究室のメンバーと共同で車いすチームスポーツ、ブラインドスポーツにおけるスポーツ外傷のリスクとなりうる状況の分析や、パラアスリートの脳振盪評価のためのベースライン測定などを企画し推進しています。
(2022年4月記)
井尻 朋人(いじり ともひと)
2021年博士号(保健学)取得 医療法人寿山会 喜馬病院 理学療法士
私は平成20年に大学院博士課程前期を修了し、その後医療法人寿山会 喜馬病院に就職しました。現在、約200人のリハビリテーションスタッフと仕事をしています。この度、改めて平成30年より3年間、社会人院生としてスポーツリハビリテーション学研究室に在籍し、博士号を取得しました。
大学院生活は、普段は大阪で勤務しながら、教室会議などがある時には広島に定期的に行くものでした。勤務した後に広島に行き、また日帰りで大阪に戻る、という生活でしたが、研究室では勤務している病院とはまた別の視点をもって議論が発展していて多くの発見がありました。そのおかげで、距離の遠さを苦にせずに、広島に数多く通い、学ことができました。また、積極的に行動することや高いレベルを目指してチャレンジすることを研究室全体として大切にしているため、自身の行動や考えをさらに上のレベルに高めてゆく時間でした。自身に負けないように積極的に発言し、新たな学びを得るために努力してきました。
現在も医療法人寿山会 喜馬病院にて、臨床や管理、研究、教育を総合的に行っていますが、研究室で得ることのできた行動力や向上心はどこに行っても役に立つものであると感じています。今後も多くの人に学ぶことの大切さを伝え、さらに理学療法でのエビデンス、指導を進めたいと考えています。
(2021年4月記)
森川 将徳(もりかわ まさのり)
2019年修士号(保健学)取得
2021年博士号(保健学)取得
現所属:国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 予防老年学研究部
特任研究員
可能性を広げてくれるスポーツリハビリテーション学研究室
はじめに、研究室に受け入れてくださった浦辺幸夫先生、本研究室との縁を結んでくださった前田慶明先生にこの場をお借りしてお礼申し上げます。
博士課程前期、後期課程では学位取得を目標に研究に向かった時間が中心でした。行き詰まった際には先生方や大学院生に相談して、だんだんと研究が育っていく過程は貴重な時間でした。以下に成果として残すことができた修士論文の内容[doi: 10.1007/s00391-020-01824-0.(SCI, IF=0.863)]と博士論文の内容[doi: 10.3390/ijerph18094511.(SCI, IF=2.849)]を紹介させていただきます。ご興味をお持ちの方はぜひ読んでみてください。なかには論文という形からこぼれてしまった研究もありましたが、学会発表(平均発表参加回数4.2回/年)としての経験や試行錯誤につながりました。
現在、私は愛知県にある国立長寿医療研究センターの研究員として勤務させていただいております。2020年に神戸であった学会の夜、浦辺先生と和牛ステーキ(500g神戸牛ではない)をいただいた時に初めて研究センターのお話をいただいたことを覚えています。あれから丸一年が経ち、これまでとは異なる体制のなかで研究に取り組ませていただいております。仕事のほぼ全てが論文を書くことに向かっています。正直なところ、修士や博士の時でさえ論文を書くことが一番の仕事になるとは思ってもいませんでした。今思えば、それほど可能性に溢れた研究室だったということだと実感しています。
新型コロナウィルスの感染拡大も落ち着きを見せ始めてきました。また以前のように、先生方と学会でお会いして意見を交わすことを楽しみにしております。末筆ではございますが、研究室の益々のご発展をお祈り申し上げます。
(2021年11月記)
森山 信彰(もりやま のぶあき)
2017年博士号(保健学)取得
現所属:福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座
大学院時代に育まれた「人間力」で社会に役立つ研究を
私がスポーツリハビリテーション学研究室に在籍していた期間には、主にアメリカンフットボールチームにおけるトレーナー活動に携わりました。また、「放射線災害復興を推進するフェニックスリーダー育成プログラム」に参加しました。このプログラムは、放射線災害後の復興について分野横断的に学ぶというスケールの大きいもので、広い視野でものごとを捉える活動を行ったことは、現在の業務にも役立っています。
現在の職場に着任してからは、大学院時代に得た問題意識をベースに、東日本大震災後の避難による中長期的な健康影響をテーマに研究に取り組んできました。また、2022年度には講師職を拝命し、ますます責任感を高めて仕事に取り組んでいます。近年、原子力発電所事故による放射線災害・新型感染症パンデミックなどの未知の脅威が私たちを襲っています。日本においては今後も、大規模災害が生じると予測されており、私たちの健康が脅かされる恐れがあります。そのような危機に対して的確に対応するために、研究の手法で貢献していきたいと考えています。
スポーツリハビリテーション学研究室は「感謝」、「行動力」、「利他の心」を重んじており、今振り返れば「人間力」を高められる組織であったと感じます。それは、現在の研究室から発信される数々の輝かしい業績や活動領域の拡大が示していると思います。これからも、日本をリードする研究室であり続けてほしいと願っております。
私の活動の紹介
「第5回ふくしま県民公開大学」
https://www.youtube.com/watch?v=Rhqb474ANwk
(2022年4月記)
2023年10月28-29日に開催された,第10回日本予防理学療法学会学術大会で大会長賞を受賞しました.演題名は「福島第一原子力発電所事故後の高齢者における被災自治体への帰還と心身機能の関連」で、災害後に避難を続ける高齢者に対してどのような支援をすべきか示唆された研究です。
近年の大規模災害の多発を受けて、「災害リハビリテーション」の重要性が認識されています。しかし、理学療法士が被災者の健康を守るために具体的に何ができるか、ということが十分に実証されているとは言えません。今回の研究では、私がこれまでに取り組んできた、要介護リスクの高い被災者に対しどう支援するか、に関する議論に結び付けていくという点で意義のあるものと考えています。この度の受賞はその重要性を評価していただけたものと思います。
2024年6月1日(土)には、福島市で第8回日本予防理学療法学会サテライト集会in Fukushimaが開催されます。私はこの集会に学術局担当の準備委員として関わっています。メインシンポジウムは災害・循環器病の2本立てとなっており、いずれも福島県における健康課題です。このシンポジウムを通して、予防理学療法をいかに地域の課題解決に活かしていくかを考え、他職種・行政機関との連携まで踏み込んだ議論を行う予定です。有意義な集会にしたいと考えていますので、ぜひ現地でご参加ください。
第8回日本予防理学療法学会サテライト集会 in Fukushima ホームページ
第8回 日本予防理学療法学会 サテライト集会 in Fukushima - 災害と循環器病に対する予防理学療法の可能性 ~世界を考え、地域で行動する~ (jsptp-fukushima.org)
X (旧twitterアカウント)
https://x.com/jsptp_info?s=20
(2023年11月記)
岩田 昌(いわた しょう)
2016年修士号(保健学)取得、愛知県出身
私は専門学校を卒業後、スポーツ理学療法を学ぶためにスポーツリハビリテーション学研究室に所属しました。大学院時代は研究も多く行いましたが、同時にマツダブルーズーマーズのトレーナーに従事し、今も研究室でサポートが続いています。
現在、宮崎県のスポーツ病院である野崎東病院で業務を行っています。宮崎はサーフィンのメッカであり、サーフィンのゲームトレーナーと研究を進めています。
(2019年8月記)
勝田 茜(かつだ あかね)
2007年修士号(保健学)取得、兵庫県出身
私は吉備国際大学で作業療法士を取得後、お世話になった教員のすすめで、スポーツリハビリテーション学研究室に所属しました。
修士号取得後、ドイツ国際平和村に4年間勤務し、アフリカなどの発展途上国で母国では治療が困難な子ども達のリハビリテーションに従事しました。その経験を現在の姫路獨協大学の教育に生かしております。スポーツリハビリテーション学研究室時代に多くの国際学会や海外研修をしたことが活かされたと思っています。
本年11月からは内閣府の青年国際交流事業としてイタリア共和国に派遣されます。一層国際的な視野を広げていきたいと思います。
(2019年8月記)
森田 美穂(もりた みほ)
2017年修士号(保健学)取得、山口県出身
私はスポーツリハビリテーション学研究室で保健学の修士号を取得したのち、2017年より現在の地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センターにて理学療法士として勤務しております。
入職から2年半、回復期病棟の患者様を担当しました。2019年10月からは一般病棟に配置となり、特に整形外科疾患について研鑽を積んでいきます。
これまで身につけることができた観察眼で、よりよい治療を目指したいと思います。
【原著論文】
・森田美穂, 浦辺幸夫, 前田慶明, 笹代純平, 藤井絵里:スタティックストレッチングおよびサイクリックストレッチング後の足関節底屈筋力の経時的変化. Journal of athletic rehabilitation 13(1) : 27-32, 2016
・森田美穂, 浦辺幸夫, 前田慶明, 藤下裕文, 沖田勇三:広島県の障がい者セーリングにおける学生ボランティアの活動報告. 日本障がい者スポーツ学会誌 25(1): 31-35, 2016
・森田美穂, 浦辺幸夫, 竹内拓哉, 前田慶明:バランスボードの随意的な傾斜が下腿筋活動に与える影響. 理学療法科学33(3): 395-400, 2018
【資料】
・森田美穂, 浦辺幸夫, 竹内拓哉, 前田慶明 "障がい者スキーを取り巻く環境問題 ~広島県におけるスキー場のバリアフリー調査から~. 日本臨床スポーツ医学会誌 25(1): 90-99, 2017
(2019年8月記)
篠原 博(しのはら ひろし)
2014年博士号(保健学)取得、岡山県出身
私がスポーツリハビリテーション学研究室で博士号(保健学)を取得した時は国体広島県アーチェリー代表チームにも帯同し、充実した研究、トレーナー活動の日々をおくることができました。
博士論文もアーチェリーをテーマとして作成することができました。当時を思うと臨床現場と研究を少しでも繋げようと切磋琢磨していました。今でもその想いは変わりなく研究やトレーナーに打ち込むことができており、この研究室での日々が礎になっていると心から感じます。
2016年より宝塚医療大学保健医療学部理学療法学科にて教員(准教授)として教鞭をとっています。
以下の論文が博士号取得の際に作成したアーチェリーの外傷予防に関する論文です。
Does shoulder impingement syndrome affect the shoulder kinematics and associated muscle activity in archers?
Shinohara H, Urabe Y, Maeda N, Xie D, Sasadai J, Fujii E.
J Sports Med Phys Fitness. 2014 Dec;54(6):772-9.
広島大学で得られた多くの経験を活かしてこれからも成長し続けていきたいと思います。
(2019年8月記)
吉村 香映(よしむら かえ)
2019年博士号(保健学)取得、愛知県出身
社会人大学院生として病院勤務と同時に院生をしており、皆さんからのサポートがあり、2015年度に修士号、2018年度に博士号を修得しました。直面する臨床現場での疑問点に関して、研究を通じて患者さんや社会へ貢献したいという思いは、研究室全体の共通認識であったと感じております。
研究デザイン立案、学会スライド・論文作成、他者との発展的なディスカッションの方法など研究や教育に関する基礎・実践の多くを学び、これらは将来の大きな糧になると考えます。海外での学会発表や英論文作成に対して、“だれか特別な人”が行うものという思考でなくなったことは、入学前と比較した大きな変化点です。今後はさらに幅広い視野で国際的に活躍できるよう取り組んでいきたいと思います。
無我夢中で臨床、勉強に集中できた大学院生時代でした。
以下が、博士課程後期在籍中に作成し採択された論文です。
・Yoshimura K, Urabe Y, Maeda N, Yoshida T: Relationship between energy expenditure during walking and step length in patients with heart failure. Topics in Geriatric Rehabilitation. 35(2): 97-103, 2019.
・Yoshimura K, Urabe Y, Maeda N, Yuguchi S, Yoshida T: Dynamics of cardiorespiratory response during and after the six-minute walk test in patients with heart failure. Physiotherapy Theory and Practice. 6: 1-12, 2018.
・Yoshimura K, Hiraoka A, Saito K, Urabe Y, Maeda N, Yoshida T, Hayashida A: Dyspnea during In-Hospital Rehabilitation as a Predictor of Re-Hospitalization, and Mortality in Patients with Acute Heart Failure (Brief Report). Journal of Cardiopulmonary Rehabilitation and Prevention [In press]
(2019年9月記)
坂光 徹彦(さかみつ てつひこ)
2007年修士号(保健学)取得、広島県出身
私は4年間の臨床を経て、スポーツリハビリテーション学研究室へ社会人枠で入学しました。臨床での疑問を研究という形で結果を求めることで解決し、納得したいというのが目的でした。臨床と研究を行ううえで思うようにいかないこともありましたが先生方や先輩、同期や後輩に恵まれたお陰で無事に修了することができたと思っています。
現在は、広島大学病院スポーツ医科学センターにて理学療法士として勤務し、入院診療業務やスポーツ選手に対するメディカルチェック、フィジカルチェック、トレーナー帯同などに従事しています。
リオパラリンピック2018のカヌー競技やの帯同や、障がい者サッカー(アンプティサッカー、ブラインドサッカー、電動車椅子サッカー)チーム「アフィーレ広島」の代表なども行っています。
在学中に得た新たな知識や技術に加え、何より人とのつながりの大切さを実感ました。教室全体で作り出す雰囲気と院生各自の暑苦しいほどの向上心が私にも飛び火した結果だと確信しています。
(2019年9月記)
金澤 浩(かなざわ ひろし)
2010年博士号(保健学)取得、熊本県出身
私は、理学療法士としてリハビリテーション病院で勤務しながら、広島大学医学部保健学科へ入学し、大学院博士課程前期、博士課程後期へと進学しました。社会人としての立場と両立しながらの学生生活は困難もありましたが、浦邉教授をはじめスポーツリハビリテーション学研究室の仲間に支えられ、有意義な研究活動、アスレティックトレーナー活動を行うことができました。臨床と研究の結びつきを肌で感じられる恵まれた環境でした。
現在は、熊本県で訪問看護ステーションを経営し、在宅医療やアスレティックトレーナーとして活動しています。平成28年熊本地震の際には、ステーションのある益城町で被災し、教授や友人達よりいち早く支援の手を差し伸べて頂き涙が出る思いでした。場所を移転して開始したステーションもようやく軌道に乗りつつあります。大学、大学院時代の経験や仲間は生涯の財産となりました。
(2019年9月記)
木下 めぐみ(きのした めぐみ)
2005年修士号(保健学)取得
私は、自身のACL損傷の経験をもとに、他大学に通っていた学生時代から、いつか浦邉先生にお会いしてみたい!と思っていました。人の縁とは不思議なもので、ひょんなことから大学時代の先輩の繋がりで、浦邉教授と知り合う機会があり、研究室の門を叩きました。在籍中は、当時注目されていた膝関節固有受容感覚の研究を中枢神経疾患に応用し、学会での優秀論文賞受賞の経験もさせていただきました。
修士号取得後は、整形外科領域で多くの臨床経験を積ませていただきました。その経験のなかで、身近な問題として、高齢者の移動手段の1つである自転車での転倒が多いことに気付き、1人でも多くの高齢者が安全に移動できる社会を目指して、臨床研究を進めて参りました。現在は、関西の大学にて学生教育に従事すると共に、高齢者の自転車転倒問題を解決すべく研究を継続しています。また、臨床や研究を通して肌で感じた「人を笑顔に導いていける理学療法士の魅力」を伝えたい思いで、日々、学生達と接しています。
ふり返ってみると、大学院時代に沢山の積極的な経験をさせていただいたことが、前向きで多角的な思考を育む原点だったと思います。その昔、研究室で切磋琢磨した仲間たちとは今でもお付き合いが続いており、貴重でありがたい存在です。そんな素晴らしい仲間たちに出会えたこと、そして育ててくださった先生方に出会えたことに感謝しながら、まさに、「志あるところに道は拓かれ、求めるところに師は現れる」(アシックス創業者:鬼塚喜八郎氏の言葉)だなぁと思う日々です。
(2019年9月記)
小林 浩介(こばやし こうすけ)
2007年度博士号(保健学)取得、広島県出身
現所属 広島市立安佐市民病院
私は2003年3月に広島大学医学部保健学科理学療法学専攻を卒業した後、大学院博士課程前期・後期へ進学しました。大学院を修了後、2008年4月から広島市立リハビリテーション病院(回復期リハビリテーション病棟)に12年間勤務し、2020年4月からは広島市立安佐市民病院(主に整形外科病棟)で働いています。
前職では「脳卒中患者の下肢装具フォローにおける回復期と生活期の連携」や「総合臨床実習の在り方の改善」に取り組んできました。現職では、「人工膝関節置換術患者の疼痛経過について分析」を行い、昨年2020度の広島県理学療法士学会で学会最優秀賞をいただきました。
急性期病棟では担当する患者さんの数が多いこと(年間の担当患者数は回復期病棟にいた時と比べて10倍ほど増えました!)が職場を変わってからの大きな変化でした。多くの症例を経験すると治療経過には幾つかのパターン(傾向)が存在することに気がつくようになりますが、そのような視点を生かすことができた研究テーマでした。
数値化することで浮かび上がる”真実”があるのだとすれば、日々の臨床で継続的にデータを蓄積することは私たち理学療法士にとって価値ある行為だと思っています。どのようなことに疑問を持ち、その疑問をどんな風に明らかにしていくのか ―大学院で学んだことが私の臨床に奥行きを与えてくれています。
そして、今年度からは病院内で発生する転倒・転落予防に関する取り組みを新たに開始しました。まさに“ライフワーク”と呼べそうな研究テーマと出会い、時間が経つのも忘れて分析を行っています。またいつの日かデータをまとめてアウトプットできるよう頑張ります。
最後に。2016年まで広島県理学療法士会の常任理事を務めておりましたが、理学療法士の抱えている課題について考えたものを文章にしています。興味のある方は、是非、ご一読ください。
▼意見交換する文化を育てる
https://www.hpta.or.jp/modules/report/index.php?content_id=31
(2021年11月記)
野田 優希(のだ ゆうき)
2009年修士号(保健学)取得、長崎県出身
スポーツリハビリテーション学研究室に在籍していた時からトレーナー活動を始めました。何から始めたらいいのか分からない状況ではありましたが、広島県のVリーグ所属のトップチームや高校バレーボール部のインターン、また広島大学霞キャンパスバレーボール部のトレーナーなど多くの経験をさせて頂きました。現在は、奈良学園大学で教員として教鞭をとりながら実業団バレーボールチームのトレーナーとして活動しています。大学院での2年間が私のスポーツ理学療法の基礎であることは間違いありません。
大学院時代のテーマであった「足関節捻挫」については、現在も継続して研究を行っており私の生涯の研究テーマになりつつあります。また、大学院時代の交友関係は今も続いており、助けられることも多く、当時は苦しい日々でありましたが今振り返ると非常によい経験であったと感じます。
スポーツリハビリテーション学研究室の皆さん頑張って下さい。
【原著論文】
・足関節内がえし捻挫受傷後の圧痛部位を考慮した片脚負荷テストとスポーツ動作開始時期の関連性. 「日本臨床スポーツ医学会誌」第26巻第1号 P.54-P.59,2018
・足関節内反捻挫後のスポーツ動作開始時期に関連する因子の検討 —交絡因子を考慮した多変量解析による検討—. 「医療福祉情報行動科学」第5巻 P.11-P.17,2018
(2019年11月記)
根地嶋 誠(ねぢしま まこと)
2008年修士号(保健学)取得
私は現在、静岡県の聖隷クリストファー大学に勤務し、教育および研究に携わっています。現職に就くと同時に保健学研究科(当時)へ進学したことは、浜松から通学すること、大学勤務も大学院生活も初めてで、心身ともに大変ではありました。が、今となっては大変良い経験であり良い思い出です。
研究はたいへん活動的で、大いに刺激を受けました。海外志向も強く、このときはじめて私自身、海外での研究発表ができました。研究室の院生には大変助けていただきましたし、浦辺教授からも多大なるご指導を賜りました。学術的な学びのみならず、この期間に今の礎になるような、理学療法士として、専門職として、研究者として、人として、多くのことを学ぶことができました。
最近の取り組みとして、高校生の部活動をサポートする活動を学生とともに行っています。身体計測や体力測定、講義などを通じ高校スポーツ選手を支援し、かつ学生の技能向上を目指しています。
大学院時代に学んだことで、まだまだ具現化できていないことが多々あります。自身の取り組みを進展させ、地域社会へ効果的な貢献ができるよう、精進して参ります。
(2019年11月記)
清水 怜有(しみず れいあ)
2019年保健学修士
現所属:国立スポーツ科学センター 理学療法士
私は学部生の頃よりスポーツリハビリテーション学研究を志し、2019年度に大学院博士課程前期を修了しました。スポーツリハビリテーション学研究室は、学生のやりたいことを尊重し、サポートしてくれる場所であると思います。実際に、私は障がい者スポーツの分野を追求したいという思いで大学院に進学しましたが、障がい者スポーツに関する研究はもちろんのこと、実際の現場に行き、そこで仕事をする理学療法士やトレーナーの方と話す機会や試合への帯同をはじめ、多くのチャンスをいただきました。私は、大学院への進学を直前まで悩んでいましたが、自分が想像していた以上のことを学ぶことができ、挑戦することの大切さを味わいました。
現在は、国立スポーツ科学センターに勤務しており、トップアスリートと関わる環境のなかで、自分の働きがプラスになるようにと、臨床、研究に取り組んでいます。このような気持ちで働けているのも、浦辺先生をはじめ、前田先生、笹代先生(元広島大学教員、現上司)、大学院生の皆様から多くの学びや気付きをいただいたおかげです。
(2021年4月記)
鈴木 雄太(すずき ゆうた)
2021年保健学博士
医療法人エム・エム会 マッターホルンリハビリテーション病院
私は2015年に広島大学医学部保健学科を卒業し、現在の勤務先であるマッターホルンリハビリテーション病院へ就職いたしました。2016年から博士課程前期、2018年から博士課程後期へ進学し、学部卒業研究を始めて6年間、スポーツリハビリテーション学研究室に在籍しました。
高校2年生の時に「スポーツ選手を支える理学療法士になりたい」と夢を抱き、浦辺先生が教鞭をとられている広島大学への受験を決めました。現在、若輩ながらアスレティックトレーナーとして日本代表チームを含めたスポーツ分野に関われていることは、スポーツリハビリテーション学研究室の環境があってのことです。自分と仲間を信じて継続すること、やる気と根気が必要でした。
研究では、スポーツ選手の傷害予防、高齢者の健康増進、産学連携での商品開発・効果検証など、幅広い分野に関わらせていただきました。また、学会・研修会の運営やボランティア活動など、書ききれないほどの多くの経験をさせていただきました。これらの経験やそこで出会った研究者、理学療法士、トレーナーなどとの関係が、私の財産になりました。
現在は、スポーツ分野の研究に加え、ロボットリハビリテーションの効果検証を行っています。今後も、スポーツリハビリテーション学研究室での経験を生かし、理学療法の発展や後進育成に寄与していきたいと考えています。
(2021年4月記)
福井 一輝(ふくい かずき)
2022年保健学博士
常に挑戦し続けた大学院時代
私は,2013年に広島大学医学部保健学科理学療法学専攻に入学いたしました.当時は修士課程まで進学することを考えておりましたが,まさか博士課程まで進学しているとは思ってもおりませんでした.学部4年生になり,研究室配属され卒業研究を進めていくなかで,浦辺幸夫教授を始め,前田慶明講師や小宮諒助教(当時は院生として私の卒業研究を助けてくださりました),多くの院生の先輩方の話を聞いたり活躍をみているなかで私もスポーツの現場で活躍したいという気持ちが強くなり,修士課程に進学した際には博士課程まで進学する決意をしておりました.
「私の大学院時代の一番の苦労は何か?」と聞かれましたら,必ず「修士論文時代」と答えております.これは,当時の私の研究力や論文執筆能力が不足しており,うまく研究結果をまとめきれなかったことが原因なのですが,当時の私はかなり苦労しておりました(おそらく人生で一番苦労した経験だと思います).
しかし,この苦労を乗り越えたことにより,私は人間として大きく成長することができたと実感しております.乗り越えれるかどうかのぎりぎりの試練をいつも与えてくださる浦辺先生には感謝しかございません(その当時は苦しかったですが(笑)).
D3として最高学年になった際には,研究室の運営を任せていただき,非常に価値のある経験をさせていただきました.このようにこの5年間で得られた経験は,今後どこに出ていっても私に自信を与えてくれるものであると感じております.
「研究力をあげるにはどうしたらよいか?」と悩んでいる後輩たちに向けて,私が5年間の研究者生活で得た一つの結論を書き留めさせていただきます.「筋トレと同様に過負荷の法則に則り,常に自分の限界に挑戦する」これに尽きると感じております.
限界に挑戦する方法は,色々あると思います.例えば,複数の研究に関ったり,多くの学会で発表したりといったことがパッと思いつくと思います.もちろん業績をあげることも大事ですが,そこに至るまでに得られた経験というものが今後の人生において非常に価値あるものになると思います.ぜひ,多くの苦労をしてみてください.そのなかで,きっと気づきがあり自分の将来への道もみえてくるのではないかと思います.
偉そうに色々書きましたが,私自身もまだまだ未熟ものですので,研究室の皆様とともに成長していければ幸いです.皆様と学会などでお会いし,意見を交換し合える日を楽しみにしております.
最後になりましたが,浦辺先生始め,前田先生,小宮先生および研究室の皆様にこの場をお借りして感謝を申し上げさせていただきます.5年間本当にお世話になりました.今後の活動を見守ってください.
(2022年3月23日記)
酒井 章吾(さかい しょうご)
2021年博士号取得
現所属:コンサルティング会社
私は2021年に博士号を取得するまで5年間,浦辺研で学びました.研究の「け」の字も知らなかった私でしたが,浦辺先生,前田先生に温かくご指導いただきました.小宮助教とも同期入学で,修士時代は一緒に四苦八苦していた頃を懐かしく感じます.学会で海外を飛び回っていたことも良い思い出で,田舎者だった私を海外に連れ出して下さった先生方にとても感謝しています.
現在,私はコンサルティング会社で企業や社会問題に対する課題解決を業務としています.「理学療法士免許を取得し,大学院まで行って,一般企業に就職した理由」をよく聞かれますが,それは明確で,大学院での研究活動を通して,「世の中の課題やわかっていないことを見つけ,理解し,解決すること」が自分にとって,知的好奇心を感じることだと気づいたからです.理学療法に出会い,浦辺研に入らなければ,この気づきはありませんでした.好きなことを仕事にできているため毎日とても充実しています.
科学の世界に「巨人の肩の上に乗る」という言葉がありますが,浦辺研に入ると巨人の肩に登らざるを得ない環境が待っています.そこにチャレンジし,死に物狂いで登りきると,巨人の足元にいたときには見えなかった広い世界を見ることができます.きっとそこまで登った人は,ようやく見えた広い世界に可能性を見出して,また足を踏み出します.踏み出した先にはさらに過酷なチャレンジが待っていると思いますが,浦辺研で頑張れた人はまた死にもの狂いで挑み続けることができると思います.現在,私がいる業界も常に結果を求められる激烈な世界ですが,浦辺研での経験があるので今も頑張れています.
もし大学卒業後,進路に迷ってこのOBページを閲覧している方がいるのであれば,是非前向きに大学院へのチャレンジを考えて下さい.きっと可能性に満ちた未来を拓いていく選択になると思います.
(2022年4月18日記)
加藤 剛平(かとう ごうへい)
東京保健医療専門職大学
学生時代は浦辺先生よりスポーツ理学療法等の授業などで大変お世話になりました。卒業後は急性期病院に勤めましたが心機一転、医療・福祉の制度について深く考えたいと思い、英国の大学院で社会政策学を学びました。その後、療養型病床、回復期リハビリテーション病床における理学療法の提供、教育、研究に携わりながら、博士後期課程で公衆衛生学、医療経済学、ヘルスサービスリサーチを学びました。
今回、日本予防理学療法学会、日本産業理学療法学会での発表でしたが、この接点を振り返ってみたところ、スポーツ理学療法などの分野で開発された高度な技術を地域社会や産業分野へ応用し、その質、アクセス、費用対効果を踏まえて社会実装できれば、より多くの方の健康が促進されるのではないか、と考えました。これを実現するためにも、スポーツリハビリテーション学で日々更新されている新しい知見に着目して、広く予防分野の研究を進めて参りたいと思います。今後とも、共に学び、研究を深めていきましょう。
(2022年11月30日記)
松浦 由生子(まつうら ゆいこ)
新潟医療福祉大学
スポーツリハビリテーション学研究室に学部生時に所属し、卒業研究を行いました。研究室での学びは、非常に有意義で、研究活動だけでなく、トレーナー活動や研究会議、ゼミ合宿などを通して、自分自身の研究やトレーナー活動の礎を形成していただきました。
大学卒業後には関東の病院勤務を経て、関東の大学院に進学しました。卒業後も浦辺先生や前田先生、そして研究室の皆様とお会いした際にはいつも暖かいお言葉をかけていただき、非常に励みとなりました。
現在は新潟医療福祉大学で勤務し、教鞭をとっております。私自身の研究室もでき、一刻も早くスポーツリハビリテーション研究室のような研究室を築けるよう、日々精進しております。
今後もスポーツリハビリテーション学研究室で学んだ信念を忘れず、研究・臨床・教育の全てにおいて社会に貢献できるよう取り組んで参りたいと思います。末筆ではございますが、スポーツリハビリテーション学研究室の益々のご発展をお祈り申し上げます。
(2022年12月27日記)
安孫子 幸子(あびこ さちこ)
2002年修士号(保健学)取得
現所属:伊藤超短波株式会社 マーケティング・技術研究本部 学術部
私は2002年に広島大学大学院で保健学修士を取得しました.研究室は川真田研(解剖学)に所属しておりましたが,大学院の講義で浦辺教授はじめ様々な分野の先生方に学ぶ機会がありました.大学院に在籍中は,解剖学実習,基礎研究,そしてスポーツ領域の実技まで多くのことを学び、貴重な2年間を過ごしました.卒業してから20年以上経った今も当時の先生方,先輩,同期や後輩と仕事で関わったり,学会などでお会いした際に多くの刺激を受けています.
現在は,物理療法機器を開発・生産・販売している医療機器メーカーの伊藤超短波に勤務しています(株).大学や大学院で学んだことや経験が現在の業務にも多いに役立っています.今後は臨床現場に限らず,国内外の幅広い分野で理学療法士が活躍されることに期待してます.
(2022年12月27日記)
隅田 祥子(すみだ さちこ)
2004年修士号(保健学)取得
千葉県出身
私は,研究室の創設期に在籍していました.当時「どのような気持ちで学んでいたか」思い出せないくらい時間が経ってしまいましたが,多様な視点や価値観に触れ,try&errorを繰り返し,限られた時間で論文をまとめるという経験が,その後の私の仕事の礎になっていることは間違いありません.
広島大学で修士号取得後,北里大学東病院でのPTとしての臨床経験、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科での学び等を経て,現在は,医薬品や医療機器を扱う会社に勤務しています.リハビリテーション領域で処方される医療用医薬品のマーケティングを担当しており,臨床経験を思い出しつつ,新しいことに日々挑戦しています.浦辺先生や共に学んだ仲間,そのつながりがある方々と,医療機関や学会等でお会いする機会もあり「当時は消化しきれないことも多かったけども,今となっては広島での時間は貴重だった」と感じています.
今後も,スポーツリハビリテーション学研究室が益々発展するとともに,そのネットワークで,多くの方に恩恵がもたらされることを祈念しております.
(2023年2月20日記)
川端 悠士(かわばた ゆうじ)
JA山口厚生連 周東総合病院 リハビリテーションセンター
私は2004年に保健学科を卒業しました。学部生時代には浦辺先生から理学療法評価学やスポーツ理学療法学を教えていただきました。理学療法評価学の授業はグループで模擬症例を対象として検査・測定を行う形式の授業でしたが、学びの多い授業で学生時代の授業の中でも印象に残っている授業のひとつです。
私は理学療法士になって20年目になりますが、卒業後は総合病院へ就職し、継続的に臨床研究に取り組んでまいりました。2014年には日本理学療法士学会学術誌「理学療法学」の第6回学術誌優秀論文優秀賞を、2016年には第28回理学療法ジャーナル賞準入賞を受賞することができました。現在は日本運動器理学療法学会評議員、山口県理学療法士会理事を務めております。
卒業後も学術大会で浦辺先生にお会いする機会は多く、先生はその度にいつも温かいお言葉をかけてくださいました。また学術誌へ論文が掲載されると、その度にお手紙を送ってくださり、非常に励みになりました。先日いただいたお便りでも、「派手さはなくてもコツコツと継続することが重要ですよ」といった旨のお言葉をいただきました。今後も変わらず臨床研究を継続できるよう精進してまいります。
末筆ではございますが、スポーツリハビリテーション学研究室の今後ますますのご発展を祈念しております。
(2023年3月30日記)
山本 圭彦(やまもと たかひこ)
2020年博士号(保健学)取得
現所属:リハビリテーションカレッジ島根
日本で学び香港で働くPT
私が勤務するリハビリテーションカレッジ島根を卒業し、香港で働くPTのAさんを紹介します。彼女は香港人(中国人)で、PTを日本で学ぶために日本語学校を経て、本校に入学してきました。卒業後は東京の病院に4年間勤務したのちに香港に帰国してPTとして働くこととなりました。
日本のPT免許を使い香港で働くためには、香港のPT協会に申請し、書類審査(出身学校や履修内容等)により合格認定を受けるか、実技試験(会話はすべて英語)を通過する必要があるようです。その実技試験の合格率は不明ですが、難易度は非常に高く設定されているようです。PT先進国と言われる国々のPTでも不合格になるそうです。彼女は見事に試験をパスしました。
香港のPTには開業権があり、開業しているPTは多いようです。そういった香港のPTが運営している「Hong Kong Rehab & Sport Center」という施設で彼女は本年度より働き始めました。日本ではスポーツPTを専門として勉強していたわけではないですが、この度、スポーツに関連する施設に入職したそうです。その施設は日本ではクリニックに近い形態の施設で、クライアントに対して、個別の理学療法を行っているようです。日本以外にもオーストラリアで学んだPTスタッフも在籍し、理学療法士以外にトレーナーも在籍している施設です。日本の施設との違いは、治療は基本的に個室で行うという点です。トレーニングフロアには基本的なトレーニング機器が整備されていました。
香港の保険制度は民間の保険が中心であり、疾病に応じて治療回数が定められているそうです。特に疼痛緩和に対するニーズが多いため、日本よりも徒手療法や物理療法の時間が長い印象です。そのため、個室ごとに徒手療法器具や物理療法機器が用意され、物理療法ではショックウエーブや超音波の利用が多そうでした。
日本のPTが香港で働くためには、実技試験が大きな課題となるそうです。技術はもちろんですが、実技試験を通した英語によるプレゼンテーション力が大きな鍵となると彼女は言っていました。日本人の仕事の丁寧さや現象(症状)に対する考え方は、香港では活きてくるようです。今後、日本と香港の交流が深まることを期待しています。
(2023年9月7日記)